
続いて、「冨嶽三十六景 凱風快晴」(天保2年・1831頃、版元:西村屋与八、横大判錦絵)。富士を様々な視点から捉えた北斎の風景画シリーズ代表作。季節や時間、天候による変化に加え、富士とともに営む人々も描き出し、36図が企画されたが後に10図がプラスされ、全46図で完成をみせている。
本図は、晩夏から初秋にかけて早朝、山梨側から見た裏富士を朝日を浴びて真っ赤に見える現象を瞬時に捉えたもの。通称・赤富士と呼ばれている。タイトルの凱風とは南風の意で、真っ青な空に浮かんだ鰯雲がたおやかさを持たせている。
富士の山稜と背景の空のシンプルな構成で、一瞬の神々しい景色を見事に捉え、雄大な富士を浮かび上がらせている。ここに北斎の真骨頂が伺える秀品図だ。
ueno-mori(台東区上野公園1-2)