ミュージアム巡り 江戸大奥 徳川種姫婚礼行列図巻 上巻

 次は、御三卿の一つ田安家の祖・田安宗武の娘・種姫が十代将軍家治の養女となり、第十代紀伊藩主徳川治宝と縁組し、天明7年(1787)に紀伊藩の江戸屋敷に輿入れ。その種姫が江戸城から赤坂の紀伊藩屋敷まで輿入れ行列した際の様子が描かれた「徳川種姫婚礼行列図巻上巻」(18〜19世紀、山本養和筆、紙本着色、縦39.9×横1481.4cm)。本作は種姫輿入れに同行した人物と役職が記録された貴重な資料。

 武家の婚礼を象徴する道具類や種姫が乗る蓬莱文様の輿、葵紋の緋笠など豪華絢爛で、将軍の娘の嫁入りに相応しい光景が再現されている。

 筆者の山本養和は、養父の泉和や狩野栄川院典信に学んだ江戸勤務の紀伊藩お抱え絵師。藩主・治宝の覚えめでたく、参勤交代に同行し何度も紀州に赴いている。

TNM(台東区上野公園13-9)

ミュージアム巡り 日本刀_重美品 則房(片山一文字)

 続いて刀「則房(片山一文字)」(Katana:NORIFUSA・Katayama-Ichimonji、鎌倉時代中期、備前国、長さ:68.9cm)。

 則房は、助真・芳房と並ぶ鎌倉中期の一文字派を代表する刀工で、福岡から片山に移住したことから片山一文字と称される。則房の見所は、地鉄が強く冴え刃文の丁子乱れが助真や吉房らに比して小規模で乱れが逆がかるところにある。

 同刀は、小板目のつんで明るく冴えた鍛えに小規模な丁子を焼き、足が細く入って乱れが逆がかり、同工の特色がよく現れている。

 なお、本作は磨上の際に失われてしまう銘字を折り返すことで、残した“折返銘”の刀である。

JSM(墨田区横綱1-12-9)

ミュージアム巡り 江戸大奥 和宮江戸下向絵巻

 次は、公武合体政策のもと孝明天皇の妹・和宮が十四代将軍家茂に嫁ぐため、文久元年(1861)に京都を出立して江戸へ下向した「和宮江戸下向絵巻」(文久2年・1862、詞書:関行篤筆、紙本着色、縦25.5×横882.1cm)。その下向時、和宮は中山道を、緒道具類は東海道をそれぞれ利用する。

 本作は、和宮が家茂への降嫁を承諾した万延元年(1860)10月5日から始まり、京都を発つ前に訪れた祇園社や江戸へ向かう道中を描きながら、家茂との婚儀で巻を終える。

 また、詞書と絵を交互に配置し、場面を区切って展開する構成により、降嫁にまつわる一連の出来事を物語風に仕立てられて、巻全体が詩的な空気が漂う。詞書の筆者・関行篤は行列の先駆を務め、子孫代々にこの一世の栄誉が伝わるよう自ら筆を執ったと伝わる。

TNM(台東区上野公園13-9)

ミュージアム巡り 日本刀_重美品 助真

 続いて太刀「助真」(Tachi:SUKEZANE、鎌倉時代中期、備前国、長さ:69.2cm)。

 助真は鎌倉中期の一文字派の最盛期を代表する刀工で、後に同国の三郎国宗や山城の粟田口国綱らとともに鎌倉幕府の命により鎌倉に移住し、鎌倉一文字とも称された。

 同時期の一文字派を代表する𠮷房・則房は華やかな丁子乱れを得意とするが、助真は地刃が他工と比べ一段と強く華やかさの中にも力強さに溢れた作風が特徴。

 本作は、板目に地沸が微塵につき、地景の入った鍛えに乱れ映りが立つ。刃文は丁子乱れに互の目やのたれを交え、匂口深くよく沸づいて明るく冴えており、刃中には金筋・砂流しがかかるなど、助真の特色がよく表された逸品。

JSM(墨田区横綱1-12-9)

ミュージアム巡り 江戸大奥 楽宮下向絵巻

 続いて、有栖川宮織仁親王の第六王女、喬子(楽宮、第十二代将軍家慶の正室、後の浄観院)が京都から江戸へ向かう道中の婚礼行列が描かれた「楽宮下向絵巻」(文化元年・1804、青樹正忠筆、紙本着色、縦31.5×横2339.3cm)。

 本作は巻いて広げる形態を活かし、変わりゆく街道沿いの風景が行列とともに現れ、婚礼一行の旅を追体験する構成になっている。大名行列や婚礼行列が描かれた絵巻には珍しく、見物する庶民の姿も生き生きとした日常が垣間見え描写されており、微笑ましい場面もある。

 楽宮は庶民の喧噪から離れ、峠を越えようとするシーンの中にある。輿は松で隠され、後ろから差し掛けられた朱の爪折傘と“御”の貼紙により、その存在が示されている。

 行列が描かれた後ろには、鳥井峠、寝覚の床、太田川、諏訪湖など中山道の名勝が続き、楽宮が途中で眺めた風光明媚な景色が再現されている。

TNM(台東区上野公園13-9)

ミュージアム巡り 日本刀_重美品 成宗

 次は太刀「成宗(古一文字)」(Tachi:NARIMUNE・Ko-Ichimonji、平安時代末期〜鎌倉時代初期、備前国、長さ:75.2cm)。本作は鎌倉初期に活躍した古一文字派のひとり・成宗の作品。

 細身で腰反り深くついた優美な姿の太刀で、板目や地沸がよくつんだ精良な地鉄には映りが鮮明。特に部分的に霞状の映りの中に指で押したような黒斑点が不規則に交じり、暗帯部が鎬近くまで高く表れるなど、古色のある乱れ映りの状態を醸し出している。

 現存品の少ない同工の貴重作。

JSM(墨田区横綱1-12-9)

ミュージアム巡り 江戸大奥 源氏物語子の日図屏風

 次は「源氏物語」を主題とする正月最初の子の日に行われた行事「源氏物語子の日図屏風」(天保12年・1841、狩野“晴川院”養信筆、紙本金地着色、右隻:縦101.1×横363.2cm、左隻:縦100.1×横363.2cm)として、右隻が「初音」、左隻が「若菜上」が描かれている。

 画面の両端、表面に“晴川院法印養信筆”、裏面に“晴川院法印筆”の落款があり、江戸後期の御用絵師・狩野(晴川院)養信の筆による事が判る。さらに養信がしたためた「公用日記」天保12年11月21日条に本図の記述があり、この屏風は後に十三代将軍家定と鷹司任子の婚礼のために用意されたものと判る。

 画面は精緻を極め、絵の具も良質で婚礼調度として相応しく、かつては江戸城大奥に所在していた屏風としての価値も高い。本作の裏面には、金地に若松が描かれ祝祭性の高い画題で吉祥性を高めている。

TNM(台東区上野公園13-9)