蔦重は時ここにありと、狂歌師“蔦唐丸”と名乗って参入。そして、文藝活動を通して大田南畝、唐衣橘洲、朱楽菅江ら当代一流の文化人達と交流を深める。蔦重が多くの文化人と詠んだ狂歌を集め、哥麿などトップ絵師が加わり狂歌本を一手に刊行。蔦重の商才は一気に華開き、江戸の文藝・文化の発信源となる。
次は、「吉原大通会」(天明4年・1784正月、版元:岩戸屋源八、恋川春町作&画、1冊・三巻合冊、墨摺小本、縦17.5×横12.7cm)。能の“大会”とは、大天狗が比叡山の僧正に命を助けられ、そのお礼に釈迦の霊鷲山で行った説法を再現し、帝釈天が現れて大天狗を懲らしめるもの。本書の黄表紙はその内容を踏まえている。
また“大通”とは大通人のことで、吉原遊行に深く通じた通人の意。ストーリーは主人公が大天狗の神通力で様々な遊びに講じるというもの。
特に当時の人気狂歌師11名(喜三二や南畝等)が珍妙な扮装をして吉原に集合し、そこに普通の姿の蔦重が現れ“この御人数で11幕の狂言を、即案じの即書き”と硯と紙を差し出して、即興で狂言執筆を依頼する場面。多くの実在人物や蔦重本人まで登場し、その自らのプロデュースと商魂を伺わせている。
TNM(台東区上野公園13-9)
