ミュージアム巡り CB風雲児_蔦重 青桜美人合姿鏡

青桜美人合姿鏡 上:春 下:夏

 続いて、「青桜美人合姿鏡」(安永5年・1776・正月、版本:山崎金兵衛・蔦屋重三郎、北尾重政&勝川春章画、3冊、彩色摺大本、各縦27.7×横18.8cm)で、吉原の各妓楼遊女達が名前入りで描かれた重政と春章の合筆絵本。

青桜美人合姿鏡 上:秋 下:冬

 ここには春夏、秋冬、員外の3巻構成で、四季折々の中で暮らす遊女の日常が描かれ、最終巻の員外には遊女達計164名が詠んだ発句が掲載されている。これはかつて、鈴木春信が遊女166名の姿絵を描いた「絵本青桜美人合」(明和7年・1770刊)の企画趣旨を継承した元と推定。

員外

 山崎と蔦重の共同出版であるが、実質的には吉原事情に詳しい蔦重が制作全般を主導したと考えられる。蔦重は安永3年(1774)の「一目千本」、同4年から始まる「吉原細見」及び「雛形若菜初模様」シリーズの刊行に続く吉原関連出版物で、吉原界における版本蔦重の存在感を示した重要作品と言える。

 同書には書画や琴、香合、生け花、花見などを愉しむ遊女達が見開きに数人ずつ描かれ、画面には室内の調度品や草花があり、あざやかな紅色で描かれている。その奥付には彫師・井上進七が記されている。

 この刊行にあたり、芸妓や贔屓筋から出資金を集めた入銀物と推定され、吉原の一大プロモーションとして企画された蔦重のプロデュースさが伺える。

 絵師は、重政が春と秋、春章が夏と冬、それに員外を担当。二人の作風は似通っているものの、耳朶形状に僅かな違いが指摘されている。蔦重は全体的に統一された絵のトーンに固執したと想われる中、春章が「古画備考」の中で“常二親ク交リテ、重政ノ指図ヲ受ク”と語っているように年長者・重政に追随するかたちで進行していったのだろう。

TNM(台東区上野公園13-9)