ミュージアム巡り CB風雲児_蔦重 一目千本

一目千本_1

 蔦屋重三郎が本格的に初めて出版物を手がけたのが、次の「一目千本」(安永3年・1774・7月、蔦屋重三郎、紅塵陌人作・北尾重政画、2冊、墨摺(1部分彩色摺)横中本、各縦13.2×横18.7cm)で、花器に投げ入れられた絵本。花のそばに遊女屋名と遊女名が添えられ、当時通人にもてはやされた生け花に遊女をなぞり紹介した評判記。

一目千本_2

 本書は吉原遊女が網羅されておらず細見のような機能がなく、非売品だったと推定される。特定の遊女、その得意客や遊女屋、茶屋などが出費して制作されたようで、遊女が馴染みの贔屓客に配布したノベルティのようなものだろう。

 一目でたくさんの花(遊女)が見渡せる意味の書名と、序首に“華す満ひ”とあり、遊女の美しさを競い合うという意味が重複されているようだ。この絵の担当は当代随一の北尾重政。

手ことの清水

 そして、「手ことの清水」(安永6年・1777、蔦屋重三郎、清水景澄作・朋誠堂喜三二序跋、北尾重政画、1冊、墨摺中本、縦13×横18.8cm)で、こちらは遊女名などを削り、生け花の絵だけの絵本とし一般向けに販売されたと推定。

 絵の後に“花挿様の作法”と“忌嫌歌二十七首”を掲載し、華道書なる生け花の指南書体裁をとっている。これは「一目千本」の版木を再利用した蔦重の商法が垣間見える。また、喜三二(清水景澄)が蔦重の出版に協力し創作したとも考えられる。

TNM(台東区上野公園13-9)